サントラが日本ゴールドディスク大賞のアニメーションアルバムオブザイヤーに選出され、国内外で大反響を呼んだアニメ「カウボーイビバップ」。説明不要の天才菅野よう子さんによって作られている劇伴は、ブルースやジャズ、テクノなど多岐にわたる音楽が雑多に詰め込まれ、1998年当時その楽曲の真新しさは群を抜いていたように思います。型にはまらない音楽制作は今でこそ日本のポップスシーンでも見るようになっていますが、この音楽とこの音楽って混ぜても良いんだ…!というアイデアの源泉はアニメ劇伴のみならず多大な影響を及ぼしました。
とりわけ、アニメーションの劇伴にお洒落でカッコいい曲が使われているという作品はそれ以前では代表的なモノでルパン三世くらいしかなく、カウボーイビバップ以降ではそういった劇伴がかなり散見出来るようになりました。例えば「バッカーノ!」「ブラックラグーン」「スペース☆ダンディ」などなど、枚挙に暇がありません。そういった意味ではルパンが祖なのでは?と思われるかもしれませんが、ルパンはアニメ第一期が1971年で、そこから1998までの間に似通った有名作品が出てきていない事から、やはりカウボーイビバップ以降に一気に似た世界観の作品が溢れだしている事から、カウボーイビバップ以降で劇伴の大きな革命があったという解釈をしていこうと思っております。
それこそ、70年代あたりであればアニメは子供が見るものという概念がまだまだ幅を利かせていた時代。80年代に「オタク」という言葉とともに徐々に大人も楽しめるような作品が現れはじめ、しかし90年代に入ってもまだまだ偏見は根強かったように思います(実体験による個人的意見)。00年代に入りようやく「大人も楽しんでも良いモノ」というように認知された背景には、カウボーイビバップが海外で非常に高い人気を誇っていたことも要因の一つでしょう。そしてその人気に火をつけたのがクールな劇伴。アニメに対する偏見があったあの時代に「音楽がとにかくクールなんだよ」といってオタク嫌いの友人に勧められたのを今も覚えている。これはつまり、音楽からアニメに入ったという言い訳が立つほどにブルージーで大人なカッコイイ曲がアニメへの偏見を取っ払った(とまではいかずとも、少なくともアニメの社会的な立ち位置を一段高くしたと見ても良いと思う)非常に稀有な作品なのだ。アニメ本編も非常に音楽とリンクしている作りになっており、劇伴というものは基本的にアニメありきで作られるものだがこの作品は音楽ありきでつくったのでは?と錯覚するほど。しかし実際にカウボーイビバップ以降は音楽抜きでは語れないアニメ作品が多々登場することになるため、アニメの劇伴の地位や立ち位置を実写映画の劇伴のようなスケールに引き上げたと言っても過言ではないでしょう。
前述したようにカウボーイビバップ以前にも大人な作品や音楽を使ったアニメはありましたが、少なくとも今も人気であり続けるアニメ作品として、これほどに短く、それでいてインパクト抜群な作品というのは数えるほどしかありません。それには主題歌はもちろん劇伴がクールだからという偉大なるきっかけ、アニメ作品に対する偏見を無くす架け橋になった事は間違いないでしょう。令和になった今聞いても新鮮に聞こえるカウボーイビバップの劇伴を是非ともこの機会にもう一度聞き直してみてください。