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株式会社アテナ

シュタインズゲートシリーズの劇伴から学ぶ不協和音の効果

 ゲームが原作のゲームは劇伴が良い作品が多々あります。元々世界観が固まっており、原曲なども存在するからか、アニメよりもスケジュール的に厳しくない事が多いからなのかはわかりませんが、そう感じるという方は意外と多いと思います。


 特に劇伴が印象に残っているゲーム原作アニメの一つがシュタインズ・ゲートでして、これに関してはシナリオの素晴らしさや魅力的なキャラクターなども勿論ですが、やはりその世界観に没頭できる劇伴の素晴らしさも群を抜いていたと思うわけです。悲しいシーンの多い作品内において、メインテーマの「Gate of steiner」等はピアノ一本(サントラ盤、アニメ本編でも頻繁に流れるバージョン)で、メロディとコードのみでここまで美しく儚い情景を思わせる表現力は秀逸ですし、他の曲なども作品内での驚きや不気味な思惑、そしてタイム・リープという禁忌を静かに不協和音で物語的に盛り上げる(盛り上げるという表現は、劇伴を聞いた時の感情とは一致しないかもしれませんが)力がありました。そんなシュタインズ・ゲートの劇伴がどうしてそのように感じるのか、について解説していきたいと思います。

1.シュタインズ・ゲートの主題歌との世界観の共有とコントラスト


 アニメのオープニングで流れる主題歌は、歴代の全ての曲に共通して「テンポが早めで、4つ打ちのビートが多く曲にノリやすい」「未来的なトラックが多い」「メロディに転調や代理コード等が多い」等の特徴が挙げられます。
対して、劇伴の多くはピアノがメインで、感情の起伏が起こる場面などでヴァイオリンやヴィオラ等の弦楽器等が多少絡む程度に抑えられています。リズムとメロディで前進する疾走感を出していくのではなく、あくまでアナログな楽器の音色(=メロディ)に全てを込めて伝えるという挑戦的な表現をしており、先程挙げたメインテーマのメロディなどが他の劇伴曲に散りばめられているのも面白い点です。表現方法が対極的だからこそアニメに幅を持たせていると感じることが出来ます。

2.効果的な不協和音の入れ方


 不協和音の使い方がものすごく上手な楽曲が多いので、一つに絞って解説させていただきます。シュタゲの中でも非常に重要な役割を担うまゆしぃこと椎名まゆりの名がつく楽曲「Mayuri`s Sadness」の最初の音で使われている不協和音を聞くと、感情の閉塞感、迷いや悩みを感じることが出来ると思います。そしてその後に続くメロディを聞くと、その悲しみはキャラクターの優しさから来るモノだったんだな、と感じることが出来ると思います。不協和音から始まって、物語のようにキャラの感情や情景を一曲にまとめている構成は感動の一言です。

何故、感情が揺さぶられるか

 劇伴ならではの良さは、映像と音楽の結びつきの強さです。短調、マイナーコードが多用されている曲が多いから悲しく響くというように単純なモノではなく、上記の通り不協和音で感じる不安感や焦燥感が、その時の劇中のキャラクターの表情、そして感情や心情にピタリとハマるからこそという良さを、シュタインズ・ゲートは最大限に活かしていると感じます。そしてそれはやはりストーリーのダイナミックさや面白さがあってこそなのは言うまでもありません。神をも冒涜する「タイム・リープ」を使い、何度でも諦めずに過去に戻り続ける「観測者」である主人公の岡部倫太郎を観測するという壮大な物語にふさわしい名曲揃いの劇伴を、是非とも物語を、様々な名シーンを思い出しながらもう一度聞いてみてはいかがでしょうか。

シュタインズゲート公式より

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