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株式会社アテナ

メイドインアビスの劇伴における意味と意義

 ドキリとさせられるような表現というのは、音楽に限らずアニメーションや漫画等においても落差、ギャップによって起こると思う。その点、メイドインアビスはわかりやすいほどに絵柄とストーリー、グロ表現などにギャップがある作品だ。少し古いが魔法少女まどかマギカの絵柄と2話までのストーリーは違和感なしの親和性だったのに対し、3話以降のストーリーとのギャップが激しかった時のリアルタイムのネットの反応は凄かった。メイドインアビスはまどマギよりもさらに激しいギャップ(しかもほのぼのとしたターンも長いからまたさらに激しく感じる)で賛多めの賛否両論でネットを伝ってコアな人気を得た。かく言う筆者もそんなネットの評判を見て「そんなにスゴイなら見てみようかな」と思って入ったクチだ。人は落差の激しいモノにどうしようもなく惹かれてしまうのかもしれない。
まあ、事前情報アリにしたっていざ見たら「ヒエッ…」ってなりましたけども。

音楽としての表現のその先

 そして、そのギャップに一役買っているのもメイドインアビスの劇伴ではないでしょうか。
パッと見は美しい光景の中に潜む背筋が凍るほど恐ろしい何か、見た目通りに幼い主人公が少しずつ残酷な現実と向き合っていかなければならない時に溢れる勇気とも恐れともつかない感情、壮大なスケールの中の深淵といったような、劇中に幾度となく現れるシーンの視聴者側のどう表現したらいいかわからない感情を刺激してくれる、そしてキャラクターの心情やどこどこまでも深い世界観をガッツリ表しているような曲たち。神秘的な響きの曲が多いですが、全体的に音階としても重低音と高音、それに加え音量や音圧のコントラスト、とても綺麗なメロディ構成とその中にほんの少し混ぜられる不協和音、焦燥感を煽るような速いリズムで迫るように追い立ててくる旋律に、突然の休符、などなど。つまり音楽的に急だったり矛盾していたり、普通にポップス曲なんかを作曲する時には避けるような斬新で挑戦的な手法で展開されているわけです。だからこそメイドインアビスの劇伴は全てにおいて引き込まれるような、聞いていて感情がかき乱されるような、それなのにずっと聞いていたくなるような不思議な魅力に溢れています。怖いのに美しいという矛盾した気持ちになるのは、そういった手法によるものではないかと思います。

原作も非常に面白いですが、アニメがさらに魅力的に感じるのはこの作品の劇伴の力も多分に影響している事か間違いないでしょう。

中でも圧倒的な「Hanezeve Caradhina」

 劇伴と言えば普通はインストゥルメンタルで、歌が入っていたらそれは挿入歌なのでは?と感じる人も多々いるかもしれませんが、この楽曲は「地球上に存在しない言語」をもとに作られているとのことなので、声も楽器の一部として使っているような感覚なのではないかと感じ、劇伴の一種として考えました。(余談ですがこの歌を歌っている斎藤洸さんは筆者と同郷の札幌在住の音楽仲間で、つい最近も渋谷で一緒のライブに出演させていただいたのですが、その圧倒的すぎる歌声は是非生で一度聞いてみて欲しいと思います)


 この楽曲の中だけでも、望郷の念、未知に挑む一歩目の勇気、恐ろしくも惹かれる興味…様々な感情が湧いてきます。そしてどうしようもなく美しく心に直接届いてくるようなメロディ。ここまでアニメ、原作のコンセプトにピッタリとはまった曲を聞いた経験は様々な音楽を聞いてきた自分でも片指で足りるほどしかありません。
メイドインアビスは、ネットの評判で大々的に広まっていった事が幸運だったかのように語る人がいますが、心に響く劇伴があったからこそ、その成功は強固なモノになったと言っても過言ではないでしょう。ぜひ、アニメと一緒にお楽しみください。

メイドインアビス公式より

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