「だが断る」「逆に考えるんだ」あたりの数々のネットミームの元ネタになり、ファンの間で「処刑用BGM」等と呼ばれる主人公たちの勝ちが確定した後に流れる劇伴、そしてセピア色になり「To be continued」の演出がTikTokで流行したりと、話題に事欠かないジョジョの奇妙な冒険。
ちなみにこのあたり、筆者を含む厄介ファンからは「原作も知らないくせに」「何が元ネタか知らん奴は使う資格なし」ととられていますが、それもそのはず。なにせ原作が始まったのが1986年。そして第一部がアニメ化されたのが2012年。実に26年もの長い期間が空いてアニメ化された作品なのでその際についた新規ファンも大勢いたのである。
元々ジョジョはカルト的人気を博しており、週刊少年ジャンプでもかなりの長期連載作品として続いていたが、「絵柄が苦手で読んでいない」「幼いころに読んだらグロくてトラウマ」という人も多く、TVアニメ化されるような作品(OVAやゲーム化などのメディアミックスはされていた。)だとは思われていなかった節があり、実際にアニメ化すると聞いてもあの不思議なテンションや世界観がアニメのみで作品を追うライト層にちゃんと刺さるだろうか…?とただの一ファンのくせに心配していたものだ。しかし、蓋を開けてみればアニメ化は大成功。原作の独特の雰囲気はそのままにしつつも、わかりづらいところ、説明不足な部分は大胆に改善し、ジョジョの奇妙な冒険が好きなスタッフが作っているんだろうなという事が非常に伝わる名アニメとなった。そんなジョジョの素晴らしい劇伴について語りたい。
冒頭でも触れたが劇伴の中で特に話題になった各部の処刑用BGMは1部、2部などの近代を題材にした部では、中世から近代への人間の進歩、そして古代の少し不気味でかつ壮大な雰囲気、遥かなる時間の経過を感じさせるような音楽であるのに対し、3部からの現代(とはいえ、80年代後半)が舞台になっているためお洒落なジャズ・ピアノサウンドとラテンを少々感じるようなリズム。エレキギター、ドラムのロックやハードロック等が合わさった、まさにあの頃に欧米で様々な音楽と融合し進化し続けていったロックのような爽快感とかっこよさが同居した曲になっているし、さらに時の進んだ4部(世紀末の日本が舞台)では90年代から徐々に台頭してきていたヒップホップとジャズが融合したようなノリノリの楽曲になっている。特にBGM人気の高い5部(21世紀初頭のイタリアが舞台)は、前半部分のイタリアンマフィアの重厚感と恐ろしさを表すような、ひりひりした緊張感が今にも弾けそうなサウンドから、後半のブレイクビーツ部分のちょっとはっちゃけた雰囲気が、年端もいかない少年でありながらギャングとして暮らすしかなかった(取り返しのつかない失敗がなければ、普通の人でいたはずの)という主人公チームの心情とも重なる。6部(2011年のアメリカが舞台。)は、今までの良いところ取りという雰囲気のフューチャージャズのような雰囲気、3部のロックの爽快感、4部5部のノリ、そしてギターソロなんかも非常に自由に演奏されている。コーラスに女性の声が入ってくるのもジョジョ初の女性主人公を表しているようで良い。
そして全編に通じて最後の音が鳴った時の「ドジャァーン!」感が心地良過ぎる。バズるのも頷けます。
時を超えて、人と人との因縁、運命が渦巻く作品だからこその、ホラー映画で使われる手法で作られた劇伴が非常に多く、まさしくどこから見始めても共通する部分が気持ちよく聞こえるため、これからもアニメを通じてジョジョのファンが増えてくれると嬉しいし、そsれだけの力がある楽曲が数多い名作アニメだったと思います。第7部「スティール・ボール・ラン」もアニメ化してくれる事を切に願っています。きっと西部劇のような劇伴が似合うだろうし、思いもよらないカッコよさで古参ファンも新規ファンも虜にしてくれる事間違いないでしょうから。