岡田磨里という脚本家を知っているだろうか?
『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。』や『とらドラ!』『機動戦士ガンダム鉄血のオルフェンズ』などの脚本で知られており、最近では『アリスとテレスのまぼろし工場』で監督を務めた。アリスとテレスで主題歌『心音(しんおん)』を歌った中島みゆきは、「普段はアニメは見ないけどとてもファンになりました!」と語っていたそうだ。
岡田磨里氏は、少し変わった経歴の持ち主で、幼少期引きこもりだったらしい。これはドラマ化された自伝『学校へ行けなかった私が「あの花」「ここさけ」を書くまで』でも紹介されており、小学校の頃から、学校の雰囲気になじめず、中学で本格的に引きこもり生活が始まり、高校になれば出席日数が足りなくても卒業できると知り、必死で勉強を頑張り、高校へ無事入学。しかしそこでも学校の雰囲気になじめず三度引きこもりへ。しかし、その後に入ったゲームの専門学校で自分と同じ様々なオタクと出会い、無事に社会復帰できるようになったらしい。
岡田磨里氏は『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。』で、自分の心の中にあるものを全部吐き出してしまったとも語っており、同じスタッフが再集結して作った『心が叫びたがってるんだ』では、もう吐き出すものがないと、大分苦悩したらしい。
そんな岡田磨里氏が初監督を務めたのが、今回紹介する『さよならの朝に約束の花をかざろう』である。
10代半ばで外見の成長が止まり、数百年生きるイオルフの民。そんなある日、僻地で暮らす彼らの平穏が、その長寿の血を狙う異種族に壊されてしまう。混乱の中を逃げ延びたイオルフの少女は、やがて森で人間の赤子を発見し、その子を育てる決意をする。というストーリーで、最後までかなり綺麗にまとまっている。
『アリスとテレスのまぼろし工場』はやや難解な芸術作品なのだが、こちらは万人受けする作品に仕上がっている。
キャラクター原案がファイナルファンタータクティクス獅子戦争などでお馴染みの吉田明彦。ゲーム畑出身だからか、ちょっぴり顔の見分けがつきにくいのが難点であるが、それでも作品の美しさを損なうことはない。
音楽は川井慶次氏。糸を織り込むような繊細な心理描写を、巧みに描きあげている。
それでは、音楽を聴いてみよう。
まずはトラック1の『イオルフ、別れの一族』。機織り機の音と、ともにこのメロディが流れ始め、イオルフの民の慎ましくも優しい、しかし、ヒロインのマキアの家族がいない寂しさなど、色々な感情が一曲の音楽に込めてある。とても素晴らしいとしか言いようがない。
次にトラック4の『母になる日々』年を取らない一族であるマキナが、人間の子供を拾って育てていく中で子供は成長していくが自分は成長しない。でも、それでも初めてできた家族に充実した日々を過ごしていくという一曲である。優しげであり、楽しげなメロディだ。
さて、最後はディザーを見てお別れしよう。
今現在ではこの映画はネットフリックスで見られる。