名探偵コナンは、間違いなく子供にも大人にも愛されるビックコンテンツだろう。
毎年劇場版が公開され、莫大なる記録をたたき出している。
今回紹介するのは、数多くの劇場版の中でも、ひときわ人気が高い劇場版第6作目・ベイカー街の亡霊である。
このベイカー街の亡霊は、VR空間でシャーロック・ホームズが住んでいた1888年のベイカー街を舞台に、コナンたちが伝説的連続殺人犯・切り裂きジャックの正体を突き止めるという推理ゲームに参加するというお話である。
コナンはシャーロックホームズが大好きであり、劇中でも「平成のシャーロックホームズになりたい」と(平成は終わっているが)豪語しており、原作の中でも、シャーロックホームズのファンの呼称であるシャーロキアンが集まる会に参加したり、実際に英国に行って、ベーカー街のモデルとなった場所に足を運んだりしている。なにしろ、江戸川コナンのコナンは、シャーロックホームズの作者であるコナン・ドイルから来ている。つまり、コナン自身もシャーロキアンなのである。
それに加え、今回の脚本家は、野沢尚である。知らない人のために紹介しておくと、テレビドラマの脚本家として有名で、『眠れる森』や『青い鳥』『氷の世界』など数多くの代表作を手掛ける反面、小説家としても優秀で、『破線のマリス』で江戸川乱歩賞を受賞し、その後も『砦なき者』『反乱のボヤージュ』『深紅』など、数多くの名作を世に送り出している。しかし、44歳にして自ら命を落としてしまい、今回のこのコナン映画は唯一のアニメ脚本となった。
次回もしもコナン映画の脚本を担当出来たら、コナンと蘭、そして灰原の三人の三角関係を書きたいと言っていたが、それも叶わなくなってしまった。
天才脚本家の突然の自殺に、当時のファンからは悲しみの声が多くあげられた。
唯一のアニメ脚本だっただけに、原作者の青山剛昌氏と何度も手直しがあり、だいぶ苦戦したことと語っている。だが、それでも次回があれば是非書きたいと言っていたということは、とても有意義な時間だったのだろう。野沢尚氏のコナン映画はもっと見たかった。
さて、今回の劇伴だが、コナンと言えば毎度おなじみ大野克夫である。『寺内貫太郎一家』や『太陽にほえろ』など様々な劇伴を手掛けてきた大ベテランだ。今回の劇伴も、その衰えは感じさせない見事な出来となっている。
まず第一に映画ごとに変わるコナンのテーマだが、今回も大胆にアレンジされて、カッコいいテーマに仕上がっている。
そして、今回は珍しくコナンが絶体絶命の窮地まで追い込まれて弱音を漏らすシーンまで出てくるのだが、その時のテーマであるトラック39『追いつめられるコナン』がある。
最後は、毎度おなじみ映画のディザーでお別れしよう。
この映画は現在、アマプラかネットフリックスで見れる。