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株式会社アテナ

京伴祭、前夜祭トリ前!小畑貴裕氏後編

小市民シリーズ劇伴演奏中。お客様は早くも二期に期待しているまなざし

前回、ひとまず小畑さんがバンドを率いて小市民シリーズの劇伴を最後のひとつ前の曲まで演奏したくだりまで書かせていただいたが、前夜祭は演奏だけにあらず。実は演奏の合間に、曲に対する想いやアニメを作る他のスタッフなども紹介されていたので、そのあたりを補足させていただきつつ、ラストの曲の盛り上がりもレポートさせていただく。

今回の前夜祭ライブの中盤でまた小市民シリーズ主人公の小鳩常吾郎役の梅田秀一郎さん、そして神部守監督が登壇された。

先程も出ていた梅田さんとは違い、監督はとても緊張した面持ち。普段人前で喋るというパフォーマンスよりも、アニメを通じてコミュニケーションをとっている監督は、どのような発言をしてくれるのか。とても楽しみだ。

監督にとって一番印象的な小市民シリーズの劇伴はやはり「メインテーマ」だそう。日本のアニメの作り方は海外と違い、映像に合わせて作り切る、というよりは、作品の印象(もしくは原作)などを先に伝え、いくつかの劇伴を作ってもらうというスタイルが多いそう。監督が劇伴を気に入り、逆に劇伴に合わせて映像を作る場合もあるそうだ。

それどころか、意識せず勝手に音楽と映像が合う場合もあるとのこと。ちなみにそれは監督と小畑さんがゴールデンコンビだからだ!という意見が飛び交っていた。劇伴の世界って奥が深い!最初は緊張されていた面持ちの監督が、小畑氏と話しているとだんだんとリラックスされてきて、アニメと劇伴という作品を通じて、2人には絆があるのだなと感じた。

さてそんな小畑氏が劇伴を作るときは、監督とまずじっくり話し合うところからはじめるのだそうだ。

舞台となる場所や、その空気感。アニメのストーリーと風景がどう絡んでいくか、この時のキャラの感情はどうだ…などなど。さらには劇伴に「尖った部分が欲しい」…などの具体的なリクエストまであるとのこと。今回の小市民シリーズで言えば、泣きながらタンメンなんかがかなり尖った劇伴という事になるのだろうか。

一通り小市民シリーズの劇伴について話し終えた後に登壇されたのは、アニメの効果音をつくるプロフェッショナルである渡辺さんと大道さん。お二人は「フォーリーアーティスト」という職業なのだとか。アニメが好きな方でも、フォーリーという職業を聞いた事のある人は少ないのではないだろうか。まさに縁の下の力持ちという感じの職だ。

フォーリーアーティストさんのお仕事は、足音や衣擦れなどのお芝居の音、つまり「首から下の声?優」という役割なのだそう。お芝居の総仕上げ、エフェクトを吹き込むのがフォーリーアーティストなのだ。今回の京伴祭では、一話の小佐内さんの足音や、押して歩いている自転車のスポークが回る音を再現していたが、これが入ると本当に「アニメが完成した!」感がスゴイ。そして、一口にアニメと言っても絵を描く人や声優さんだけではなく、多種多様の人達が関わって作られているのだなあと、改めて感動させられた。

そうこうして、ついに小畑さんの最後のライブ楽曲となる。ラストは、メインテーマのボーカル入りバージョンだ!

この楽曲、普通に聞くと耳心地の良い素敵な音楽なのだが、小節をワザと一つ少なくしたりしている部分がある。つまり8小節無ければいけない部分が7小節になっていたりとか。だが変拍子という訳でもなく、絶妙なバランスの上で成り立っている音楽だという事がわかる。このちょっと不思議な小節部分なんかは「小市民になりたい!」と言ってるのに小市民にはなれていない二人を表しているのだそう。

さて、さきほどのメインテーマとの違いは「歌が入っている事」だ。ユリカリパブリックさんの歌うメインテーマは、まさしく小市民シリーズを象徴する楽曲であり、どこか民族テイストを感じるエキゾチックな声がのると、非常に聞こえ方も違ってくるのがおもしろい。

作品の力、そして楽曲の力が合わさると、小市民シリーズの聖地である岐阜に行ってみたくなる。岐阜って、なんだかとても魅力的な街なのでは…?と思ってしまう。アニメの美麗な映像、そしてメインテーマの素晴らしさ…特に、筆者のように行ったことのないものにとっては、岐阜のイメージを良くするのにこれ以上の宣伝はないのではないだろうか。

楽曲としてはやはり、サビ前のギターアルペジオが気持ち良い。こういった部分に小畑氏の「ポップス」に昇華させる力、そして大多数の人が聞きやすい音として伝える力が並外れているものだと感じさせられる。

さらに最後の曲で感じたのは、普通のJ‐POPのようにボーカルが主役!という感じではなかったこと。それは音量もそうだし、見せ方もそうだった。これはやはり劇伴ならではの魅力なのだろう。ボーカルも一部の音であり、そして全てが合わさってはじめて劇伴という一つの作品になっているのだと。

さて、次回はついに京伴祭の主催である「林ゆうき先生」が登場します!

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